投稿日:2026.09.05 最終更新日:2026.09.05
木造モルタル外壁で「Vカット」を捨て、「盛り上げ施工」を選んだ理由
こんにちは、ぺんき屋美装 代表の多田です。
外壁塗装の世界は非常に奥が深く、そして時には残酷です。「壁をきれいに塗り替えること」自体は、プロであれば当たり前の技術です。しかし、本当に難しいのは、その美しさと「防水性・耐久性」を10年、15年という長期間にわたって維持することにあります。
「せっかく塗装したのに、数年でまた同じ場所にひび割れ(クラック)が出てきた」
「補修した跡がミミズ腫れのように浮き出て、逆に汚く見える」
こうしたご相談やご不満の声は後を絶ちません。
今回は、私たちが12年前に施工させていただいた、とある木造モルタル仕上げのお宅の「クラック補修」の事例をご紹介します。
結論から申し上げます。私たちはこの現場で、業界で一般的に「正解」とされている補修工法を、あえて採用しませんでした。
なぜなら、その一般的な工法を木造モルタル壁に行うと、お客様の大切な家を根本から傷つけてしまう「重大な危険」があるからです。そして、私のその見立てと判断が正しかったことが、12年という歳月を経て見事に証明されました。
これは、表面上の見栄えよりも「建物の寿命」を第一に考えた、塗装職人としてのこだわりと執念の記録です。
目次
1. 12年前、現場で目にした「クラックの悩み」
まずは、こちらの写真をご覧ください。

これは、私たちが施工してから12年が経過した現在のお宅の外壁写真です。
一見すると、少し驚かれるかもしれません。1階のシャッターボックスの上や窓の周囲など、塗装した壁面に白い筋のような模様が幾筋も残っているのがお分かりいただけるでしょうか。
「せっかく塗装したのに、補修した跡が目立ちすぎているのではないか?」
「これは施工の失敗ではないのか?」
写真だけをご覧になった方は、そう思われるかもしれません。
しかし、断言します。この「一見して目立つ補修跡」こそが、私たちが12年前に意図して仕掛けた施工であり、現在もこのお宅を雨水の侵入から守り続けている最大の功労者なのです。
12年前、私たちが初めてこのお宅の調査に伺った際、施主様は外壁全体に広がる無数のクラックに深く悩まされていました。
木造住宅のモルタル外壁は、建物の揺れや伸縮、経年劣化によってどうしてもクラックが発生しやすい運命にあります。放置すれば、そのクラックから雨水が侵入し、内部の木造骨組み(柱や土台)を腐らせ、住まい全体の寿命を著しく縮めてしまいます。施主様もそのことを大変心配されており、「なんとかしてクラックをしっかり止めたい」と強いご要望をお持ちでした。
2. 一般的な「Vカット工法」とは?なぜRC造では有効なのか
外壁の深いクラックを補修する際、建築業界で最も一般的かつ標準的とされているのが「Vカット(またはUカット)シーリング工法」です。
この工法は、以下のような手順で行われます。
- Vカット: 電動工具(ディスクグラインダー)を使い、クラックに沿って外壁をV字型(またはU字型)に深く削り広げる。
- 清掃・プライマー: 削った溝の粉塵を取り除き、密着性を高める下塗り材(プライマー)を塗る。
- シーリング材の充填: 削って広げた大きな溝の中に、ゴムのように伸縮するシーリング材(コーキング材)をたっぷりと充填する。
- 表面の平滑化・塗装: シーリング材の上からモルタル等で段差を埋めて平らに整え、その上から全体を塗装する。
なぜこの工法が一般的なのでしょうか?
それは、クラックの表面だけを塞ぐのではなく、溝を大きく掘ることで「シーリング材の量(肉厚)」を確保できるからです。厚みのあるシーリング材は伸縮性に富むため、建物が動いてもクラック追従能力が高く、雨水の侵入を強力に防ぐことができます。
そして、このVカット工法が真価を発揮するのは「RC(鉄筋コンクリート)造」の建物です。
RC造の壁はコンクリート自体が非常に分厚く強固な構造体です。表面を10mm〜15mmほどV字に削り取ったとしても、構造全体に影響を与えることはまずありません。しっかりと溝を作ってシーリング材を充填することが、雨漏り防止において非常に有効かつ合理的なアプローチとなります。
3. なぜ木造モルタル壁でVカットをしてはいけないのか?「ラス網切断」の恐怖
しかし、今回の現場はRC造ではなく、「木造住宅のモルタル仕上げ」でした。
私は、施主様にこうお伝えしました。 「このお宅でVカットをしてシールを充填するのは非常に危険です。私はやりたくありません。」
一体なぜでしょうか?そこに、木造モルタル壁ならではの構造的なリスクが存在するからです。
木造住宅のモルタル外壁は、以下のような層で作られています。
- 木造の下地(柱や合板)の上に「防水紙(フェルト)」を貼る。
- その上に、モルタルを壁に強力に固着させるための金属製の網「ラス網(ラス金網)」を張る。
- そのラス網に食いつかせるようにして、モルタルを塗り重ねていく。
ここで最も重要なポイントは、木造住宅のモルタル層の厚みは、わずか20mm程度(2cm前後)しかないということです。
もし、この厚み20mm程度のモルタル壁に対して、電動工具でガリガリとVカットを行ったらどうなるでしょうか?
クラックの深さに合わせて工具の刃を入れると、わずか10mm〜15mm削っただけでも、モルタル内部に埋め込まれている「ラス網」に一瞬で届いてしまいます。
「ギギギッ!」
工具の刃が金属を噛む音とともに、モルタルを支えている命綱であるラス網がバツバツと切断されてしまうのです。
ラス網を切ってしまうと、どうなるか。 それは、モルタルを壁に繋ぎ止めている「骨組み」を断ち切ることを意味します。
- モルタル保持力の喪失: 網を切られたモルタルは壁体への食いつきを失い、浮きや剥落(はくらく)を引き起こしやすくなります。
- 新たな構造クラックの誘発: 切断された箇所に応力が集中し、Vカットした補修箇所のすぐ脇から、以前よりも大きくて深刻なクラックが次々と発生します。
- 致命的な雨漏りへ: 傷ついた下地から雨水が侵入し、木造の構造体を直接腐食させます。
つまり、「ひび割れを直すためにVカットをした結果、外壁の骨組み(ラス網)を切ってしまい、建物を根本から壊してしまう」という本末転倒な事態に陥るわけです。
RC造なら意味のあるVカット工法も、厚みが20mmほどしかない木造モルタル壁においては、「ラス網を切ってしまう懸念」が拭えない、非常にリスクの高い施工になってしまうのです。
4. 逆転の発想:壁の上に盛り付ける「クラック処理材」の施工
「Vカットが使えないなら、どうやって深いクラックを抑え込むのか?」
私が導き出した答えは、「既存の壁(モルタルとラス網)には一切傷をつけず、外壁の上にクラック処理材を盛り付けるように施工する」という方法でした。
この施工のコンセプトは極めてシンプルです。
- 下地を絶対に傷つけない: ディスクグラインダー等での削り(Vカット)は一切行わず、モルタルとラス網の健全な状態を100%維持する。
- 表面に厚みを作って盛り付ける: クラックの直上とその周辺に対して、非常に伸縮性と耐久性に優れた高弾性のクラック処理材(特殊シーリング材・高弾性フィラー等)を、あえて肉厚に「盛り上げる」ように塗り重ねる。
- 盛り上げた処理材の中で応力を逃がす: 地震や寒暖差で建物が動いた際、下地のモルタルが動いても、上に盛り付けた厚みのある処理材がゴムのように伸び縮みして動きを吸収する。

写真をご覧いただくとお分かりのように、クラックに沿って処理材を幅広く、かつぷっくりと厚みを持たせて盛り付けています。
私の考えはこうでした。
「どうせ補修箇所はどうやっても目立ってしまうんだ。それなら、中途半端に平らにして薄くなり、後から塗膜が破れるくらいなら、補修箇所が目立つことを覚悟の上で、外壁の上にしっかりと盛り付けるように施工しよう。」
「そうすれば、建物が応力で動いたとしても、盛り付けた処理材の“厚み”の中でクラックの動きが逃げ、上から塗る塗膜が破れることは絶対にないはずだ。」
壁の内側を削るのではなく、壁の外側に「伸縮するクッション」を乗せる。これが、木造モルタル壁を守るための私なりの逆転の発想でした。
5. 施主様への説明:「見た目」を取るか、「家の寿命」を取るか
しかし、この工法を施工するにあたり、越えなければならない最大のハードルがありました。 それは「仕上がりの見た目(美観)」です。
一般的な塗装工事では、補修跡をできるだけ平らに削り、目立たなくすることが「綺麗で良い施工」とみなされがちです。
ですが、私たちの「盛り上げ施工」を行うと、外壁の上にぷっくりとした肉厚な筋が残るため、上から塗装を仕上げても、光の当たり具合や角度によって補修のラインがはっきりと浮かび上がってしまいます。
施工前、私は施主様に隠さず全てをお伝えしました。
「〇〇様、Vカットをして平らに仕上げれば、直後は綺麗に見えます。しかし、それでは大事なラス網を切ってしまい、数年後に家を傷めるリスクがあります。」
「私たちが提案する『盛り上げ施工』は、補修した跡がどうしても筋になって目立ちます。見栄えの点ではスマートではないかもしれません。ですが、建物の中に水を入れることは絶対にありませんし、10年経っても塗膜が破れることはありません。」
「見た目の平滑さを取るか、それとも家を長持ちさせる安心を取るか。」
施主様は私の技術的な説明にじっくりと耳を傾けてくださり、最後はこう言っていただけました。
「多田さん、家が長持ちするのが一番です。見た目の跡が少し目立ったって構いません。我が家を一番守れるその方法でやってください。」
職人として、これほど意気に感じ、身の引き締まるお言葉はありませんでした。
6. 12年目の真実:思惑通り、現在も現在だ
そして、施工から12年という歳月が流れました。
冒頭のお写真を、もう一度ご覧ください。
[ここに写真を挿入]
12年が経過した現在のお宅の状態です。
確かに、当時の思惑通り、盛り付けた補修の跡は白い筋としてはっきりと残っています。新築のような「ツルッとした平滑な壁」ではありません。
しかし、注目していただきたいのは、「その盛り上げた補修材や塗膜が、12年経った今も一切破れていない」という事実です。
この12年間の間には、大きな地震もありました。夏の猛暑と冬の厳寒による建物の伸縮運動も、何千回、何万回と繰り返されてきました。
もし、薄くVカットして誤魔化すような施工をしていたら、あるいは無理に平らに削っていたら、間違いなく数年でシーリングがちぎれ、塗膜が破れ、そこから再びクラックが再発していたでしょう。
しかし、私たちが外壁の上にたっぷりと盛り付けた処理材は、12年間絶え間なく発生した建物の「応力(動き)」を、その厚みの中で見事に吸収し続けてくれました。
「塗膜は破れ無いはずと考え施工したのだが、思惑通り12年経った現在も現在だ。」
写真に写る補修跡は、失敗の跡などではありません。12年もの間、雨水の侵入を完璧に防ぎ、大切なご自宅の構造を守り抜いてきた「頼もしい勲章」なのです。
7. 職人として譲れない「建物ファースト」の精神
塗装工事の目的とは何でしょうか?
家を好きな色に変えて綺麗にすることでしょうか? もちろん、それも大切な要素の一つです。
しかし、私たち「ぺんき屋美装」が考える塗装工事の本来の目的は、「厳しい自然環境から建物躯体を守り、お客様が安心して長く暮らせる家を作ること」です。
Vカットをして見栄えだけを良くし、引渡し時にはお客様から「綺麗になったね」と喜ばれる工法を選ぶことは簡単です。しかし、数年後にラス網の切断が原因で壁が傷み、お客様が悲しい思いをすることを知りながらそんな施工をするのは、プロとして絶対に許されないと考えています。
- 建物の構造(RC造なのか、木造モルタルなのか)を正しく理解すること。
- それぞれの壁の厚みや内部の仕組み(ラス網の有無など)を把握すること。
- 単なるマニュアル通りではなく、根拠に基づいた最適な工法を選択すること。
これこそが、真の「職人仕事」であり、私たちが最も大切にしている姿勢です。
8. 木造モルタル外壁のクラックでお悩みの方へ
ご自宅の外壁にクラック(ひび割れ)を見つけ、不安を感じている方へ。
業者に相談した際、「Vカットしてシールを埋め込めば大丈夫ですよ」と簡単に言われたら、少しだけ立ち止まってみてください。
そのお宅は、木造モルタル仕上げではありませんか?
その業者は、モルタルの厚みやラス網のリスクを理解した上で提案していますか?
住宅の補修に「どの家にも当てはまる万能な正解」はありません。一軒一軒、構造も、壁の厚みも、置かれている環境も異なるからです。
見た目だけのその場しのぎの工事ではなく、10年後、15年後を見据えた「本当に家を長持ちさせる施工」をしたい。
そうお考えであれば、ぜひ一度ぺんき屋美装にご相談ください。
私たちは、お客様の大切なご自宅の構造を正しく見極め、誠心誠意、職人のプライドを持った最適なご提案をさせていただきます。
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10年~15年先の次の塗り替えまで安心してお過ごし頂ける塗り替えをお約束します
町田市・八王子市・多摩市の外壁塗装はぺんき屋美装
なぜ〝ぺんき屋美装〟の塗り替えは長持ちするのか、動画でご紹介させて頂いております。よろしければこちらもご覧ください
https://www.painterwork.com/video/
「ぺんき屋美装」で働く職人さん達は、日々どんな思いで働いているのか?聞いてみました。
町田市で評判の良い塗装会社
_______ この記事を書いた人 ________
多田 勇一
プロフィール
東京都町田市の有限会社ぺんき屋美装代表取締役、40年以上住宅塗装に携わり、様々な新建材の使用された結果を見て来た経験から、塗装だけではなく建物に使用されている建材の状態や問題があればその建物の状態を正しく理解し、最善の施工の提案が出来るようひと月の施工件数を6棟までとし、お客さま一人一人にしっかりと寄り添い、本当に必要な工事を提供している。
保有資格
建築塗装一級技能士・二級施工管理技士(仕上げ)・NTスラリー瓦塗替え工法施工者認定・水谷ペイント認定技術者・スーパーセランフレックス 認定施工店・一般建築物石綿含有建材調査者
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